朝の9時くらいだと思うんですが、
僕の家は高井戸の近くです。
線路沿いに歩いて
踏切をわたるとあるんですが
9時ですからね
電車は多く、踏切は閉まりがちです。
で、僕は踏切の前でカンカンしながら待ってたわけですよ。
そいたらね
向かいから子供が全力疾走してくるんですよ。
おおい止まれー!
と言いたくなる程の全力疾走でしたが、
子供は踏切に体当たりして止まりました。
うむ。
一応止まった。
体当たりは駄目だけどよく止まったぞ少年。
少年というか親。
よい教育ではないが親。
君の子供は止まったぞ。
多分、6、7才だと思う。
真っ黄色のジャンパーを着て
そのパッションカラーに
僕は安田というパッション男を思い出しましたが、
色の思い出は強烈だなあと思いながらも
安田は25だし仮に安田は7才でも踏切に体当たりはしないだろうなあうふふ。
とか僕が想像するかしないかの矢先、
少年は体当たりの勢いを利用するがごとくちょろちょろし、
踏み切りに設置されている非常ボタンを見つけると即座にボタンを押してしまいました。
止める間、なし。
ためらい、なし。
鳴り響く警報。
しょうねーーーん!
最初は自分が何をしたかわからない少年は、
びーっ!
びーーーっ!!
と鳴るけたたましい警報音におびえるだけでしたが、
踏切上がらない
電車止まる(復旧まで実に6台が徐行運転した。)
警察くる
駅員来る
車は果てが見えない程の大渋滞。
車から人降りてくる。
人だかりできる。
何もない。
何もないのに警報。
解かれない警戒態勢。
うなだれる少年。
そうだぞ少年。君の指が呼び込んだ運命だこれは。
あ、この時高橋は踏切横に書かれた電話番号に電話してました。
『向かいにいる子供がボタン押しちゃったみたいなんですよう』
でもあそこに電話しても関係ないんですね
どんどん来ましたどんどん。
人も車両も電車もとにかく。
パレード?
みたいになりました。
10分くらいしてようやく踏切が上がったんですが、
(ホントに、一度ボタンおされたら、無事とわかった所で乱れたダイヤは戻らないのね)
少年はその時にはもう、真っ青でした。
顔面蒼白展覧会とかあったら飾れるくらい。
僕はへらへらしながら、手を振りながら、少年に近づきました。
少年は手を振り返してくれましたが、多分意識はありません。
『電車一杯とまったねえ』
『うん。』
『なんで止まったかわかるかい?』
『僕が、僕がボタンを押したから・・・』
この言葉を僕は忘れないでしょう。
まだ広がり切っていない小さな少年の世界で、
電車が、人が、車が、道路が止まるというのはきっと天変地異だったのでしょう。
その天変地異を呼び起こしたのは紛れも無く、
その少年自身の指なのです。
自分の指が世界の一部を切り崩してしまったと
感じているんだこの子供は。
そしてそれを責めている。
僕はそれを少しだけ羨ましいと思いながらも、
これは踏切で危ない事が起きそうな時に、皆に知らせるボタンなんだよ。
だから皆集まってきたんだよ。危なく無い時は押してはいけないんだよ。
と説明しましたが、多分伝わっていません。
あの非常ボタンは、世界を滅ぼすボタンとして少年の胸には刻まれたのです。
非常を知らせるボタンというのはもはや只の事実で、
少年の真実では、真っ赤で、けたたましい音を鳴らす、恐ろしいボタンです。
おかげで家の前で立ち往生でしたが
少年と話せてよかった。
もしも京王線で遅れの影響があった方がいらしたら、
許してあげてください。
僕は見ていました。
少年の心が一大事だったんです。
でも、かけがいのない経験です。
明日は青年団の先輩俳優とお茶してきます。
明日っていうか、もう、今日の昼か。
早い人はそろそろ起きる時間ですね。
おはようございます。
今日は恐い踏切は止まりませんように。
電車の揺れは好き。
高橋でした。